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名古屋高等裁判所 平成8年(行コ)10号 判決 1996年10月17日

名古屋市中区丸の内三丁目一九番一四号

控訴人

川合陽子

名古屋市中区三の丸三丁目三番二号

被控訴人

名古屋中税務署長 花木利明

右指定代理人

西森政一

桜木修

番場忠博

竹中守

高田延男

山下純

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が控訴人の平成三年分の所得税に係る更正の請求に対し平成五年六月二九日付けでした更正すべき理由がない旨の通知を取り消す。

三  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

第二事案の概要

一  本件は、控訴人が、平成三年分の所得税に関し、分離長期譲渡所得に係る資産譲渡は保証債務を履行するためにしたもので、その履行に伴う求償権の行使が不可能になったから所得税法六四条二項に該当するなどとして更正の請求をしたところ、被控訴人が、平成五年六月二九日付けで更正すべき理由がない旨の通知をしたため、控訴人が被控訴人に対し右通知の取消しを求めた事案であり、原判決は、右請求を棄却した。

二  当事者双方の主張は、原判決四頁三行目末尾の次に、「また、控訴人は、汲田麻左於との間で、平成三年九月二九日、太平建設の同人に対する一五〇〇万円の借入金債務について保証する旨合意した。」と付加するほか、原判決の事実及び理由欄「第二」に記載されたとおりであるから、これを引用する。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決一一頁五行目末尾の次に以下の記載を加えるほか、原判決の事実及び理由欄「第四」の説示と同一であるから、これを引用する。

「なお、控訴人は控訴人が汲田麻左於との間で、平成三年九月二九日、太平建設の同人に対する一五〇〇万円の借入金債務について保証する旨合意したと主張し、右事実に沿う証拠として甲第五、第六号証を提出している。確かに、甲第六号証は太平建設の汲田麻左於に対する一五〇〇万円の金銭借用書であり、同借用書の保証人欄には控訴人本人の署名押印があるが、その署名押印は、通常であれば保証人として署名する者の住所を記載すべき欄にされていることが右書面上明らかである上、右控訴人の署名押印部分が空白になっている点を除けば、甲第六号証と全く同一の文書の写である乙第一一号証が存在し、しかも、弁論の全趣旨によれば、右乙第一一号証は、本件更正請求があった際に控訴人本人から被控訴人に提出されたことが窺われるのであるから、これらの事実を併せ考慮すれば、控訴人提出に係る甲第六号証の金銭借用書中控訴人の署名押印部分は本件更正請求後に加えられたものであることが明らかというべきであって、これを控訴人主張の右事実を裏付けるための証拠として採用することは到底できない。また、甲第五号証は控訴人の裏書のされた受取人白地の約束手形にすぎないから、これだけをもって控訴人の右主張事実を認めるには足りないと言うべきである。」

二  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮本増 裁判官 小松峻 裁判官 立石健二)

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